決算資料を読むべきか、チャートを先に見るべきか。個別株を調べ始めると、ここで手が止まりやすくなります。ファンダメンタルズ分析は企業の業績・財務・事業を、テクニカル分析は株価・出来高などの値動きを見る方法です。
二つは競争相手ではなく、答える質問が違います。「どんな会社で、利益や財務はどう変わったか」は決算資料、「市場で今どんな価格の流れが起きているか」はチャートで確認します。この記事では、見る資料と指標を分け、同じ銘柄を往復する順番まで整理します。
違いは、企業の中身を見るか、市場の値動きを見るか
ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析では、分析対象が違います。前者は企業や経済の基礎的な条件、後者は市場でついた価格や売買量を扱います。どちらか一方で、企業価値と売買時期の両方が分かるわけではありません。
| 比較軸 | ファンダメンタルズ分析 | テクニカル分析 |
| 主な質問 | 企業の業績・財務・事業はどう変わったか | 価格と出来高はどんな流れにあるか |
| 見る資料 | 決算短信、有価証券報告書、決算説明資料、適時開示 | 日足・週足チャート、ローソク足、出来高、各種指標 |
| 代表指標 | 売上高、営業利益、EPS、PER、PBR、ROE | 移動平均線、出来高、RSI、高値・安値 |
| 単独では分からないこと | 市場の期待が価格へどこまで織り込まれたか | 利益の質、財務の安全性、事業変化の理由 |
最初に「会社の変化を知りたいのか」「値動きの状態を知りたいのか」を決めると、開く画面を選びやすくなります。
ファンダメンタルズ分析は、決算資料で業績・財務・事業を見る
企業分析では、まず会社のIRページにある決算短信と決算説明資料を見ます。売上高や営業利益が前年同期からどう動いたか、通期予想に変更があるか、どの事業が増減へ影響したかを確認します。数字だけでなく、その理由まで読むのがポイントです。
| 指標 | 何を見るか | 注意点 |
| PER | 株価が1株利益の何倍か | 業種や成長率が違う会社を倍率だけで比べない |
| PBR | 株価が1株純資産の何倍か | 1倍未満だけで割安と決めず、収益性や資産内容も見る |
| ROE | 自己資本に対して利益をどれだけ生んだか | 借入や自己資本の減少で高く見える場合もある |
PER・PBR・ROEは、野村證券の用語解説でも代表的な指標として挙げられています。ただし、1期の数値や固定した基準だけで結論を出さず、同じ会社の過去推移、同業他社、会社計画と合わせて読みます。
テクニカル分析は、チャートで価格と売買の流れを見る
テクニカル分析では、ローソク足、高値・安値、移動平均線、出来高、RSIなどを使います。たとえば日足で株価が25日移動平均線の上か下か、直近高値・安値が切り上がっているか、出来高が平常時より増えたかを見ます。
ここから分かるのは、過去から現在までの値動きの形です。チャートが上向きでも次の上昇を保証せず、RSIが30以下でも企業価値の割安さを示しません。日足か週足か、移動平均線は何日か、RSIの期間は何日かをそろえてから比較します。
| 見るもの | 読み取れる範囲 | 別に確認すること |
| 高値・安値 | 上昇・下落・横ばいの方向 | 方向が変わった材料 |
| 移動平均線 | 一定期間の価格の平均と傾き | 期間設定、急変時の遅れ |
| 出来高 | 売買が平常時より増減したか | 決算や適時開示など増えた理由 |
| RSI | 一定期間の上げ幅・下げ幅の偏り | 強いトレンド、期間・計算方式 |
KDDIを例に、決算資料とチャートを往復してみる
理解用の例としてKDDIを使います。2026年7月23日時点で企業を調べるなら、まずKDDI公式IRの決算短信・決算説明資料を開き、売上高、営業利益、通期予想、事業別の増減理由を確認します。次に証券会社の画面でKDDIの日足チャートを開き、25日・75日移動平均線、直近高値・安値、出来高を同じ日時点で見ます。
| 順番 | 開くもの | 確認する問い |
| 1 | KDDI公式IRの決算短信 | 業績と会社予想はどう変わったか |
| 2 | 決算説明資料・適時開示 | どの事業・出来事が変化の理由か |
| 3 | 株価指標の推移 | PER・PBR・ROEを過去や同業と比べるとどうか |
| 4 | 日足・週足チャート | 発表前後で価格と出来高がどう反応したか |
この例の目的はKDDIをすすめることではありません。同じ銘柄でも、決算資料は「会社で何が起きたか」、チャートは「市場がどう反応したか」を見るため、片方をもう片方の代わりにはできないと理解するためです。数値や株価は変わるため、実際に確認する際は最新の公式資料と取引画面を使ってください。
個別株は、目的・中身・評価・値動きの4段階で見る
情報を増やしすぎないために、確認順を4段階に分けます。最初から指標を全部並べるより、「何を知るための数字か」を固定した方が、二つの分析を混ぜにくくなります。
| 段階 | 確認 | 止まる条件 |
| 1 目的 | 長期保有候補か、値動きの観察か | 目的が曖昧なら売買判断へ進まない |
| 2 中身 | 業績、財務、事業、会社予想 | 減益理由や財務悪化を説明できない |
| 3 評価と背景 | PER・PBR・ROE、同業・過去比較、材料 | 倍率だけで安い・高いと決めている |
| 4 値動き | 高値・安値、移動平均線、出来高、RSI | 一つのサインだけで時期を決めている |
長期保有を考える場合でも、チャートは市場の反応を確認する補助になります。短い値動きを見る場合でも、決算発表や業績修正を無視すると、価格が動いた理由を取り違えやすくなります。
片方だけで決めるときの3つの注意点
| 決めつけ | 見落とし | 追加確認 |
| 好業績だから株価は上がる | 期待がすでに価格へ織り込まれている場合 | 会社予想、市場評価、発表後の価格・出来高 |
| PER・PBRが低いから割安 | 利益悪化、資産の質、低評価の理由 | 過去推移、同業比較、決算資料 |
| チャートの形が出たから続く | 決算・業績修正・市場急変 | 適時開示、材料、複数の時間軸 |
JPXと野村證券の解説でも、ファンダメンタルズは経済・企業の基礎条件、テクニカルは価格データの型や傾向を扱うものとして分けられています。どちらも将来を確定する方法ではなく、違う種類の不確実性を整理する道具です。
よくある疑問
初心者はどちらから学べばいいですか?
個別株を長く持つ候補なら、決算短信で売上高・営業利益・会社予想を見るところから始めると、価格の背景を理解しやすくなります。その後に日足チャートで高値・安値と出来高を確認すると、二つの役割を分けて覚えられます。
テクニカル分析だけで企業の割安さは分かりますか?
分かりません。テクニカル分析は価格と出来高の推移を扱います。企業価値に対する評価を見るには、利益、純資産、PER、PBRなどを別に確認します。
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二つの分析を、企業の見方とチャート指標へ分けて深掘りする記事です。
- 高配当株・成長株・割安株の違いから、企業を見る目的を整理する
- テクニカル分析を売買時期の断定にしない注意点を確認する
- 5日・25日・75日移動平均線の役割を確認する
- RSIの70・30を反転確定と決めない見方を確認する
まとめ
ファンダメンタルズ分析は企業の業績・財務・事業を、テクニカル分析は市場でついた価格・出来高の流れを見ます。二つは優劣ではなく、答える質問と開く資料が違います。
個別株を見る時は、目的を決め、決算資料で中身を確認し、PER・PBRなどの評価と背景を調べ、最後にチャートで市場の反応を重ねます。同じ銘柄を二つの画面で往復すると、一つの数字や形だけで決めるのを避けやすくなります。


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